クールな部長とときめき社内恋愛
もう、わたしのことを振り回さないで!
という心の叫びが相手に聞こえるわけがない。いたずらっぽく頬を緩める藤麻さんは、わたしのデスクにあったファイルを半分持っていく。

そして言った通り、わたしの仕事が進んだら次は彼の仕事を手伝わされて“ふたりで一緒に頑張った”という一日になってしまった。

「藤麻くんって面倒見いいんだね。友野さんともいいコンビだし」

「友野さんには助けられましたよ。俺のサポートすごく上手だから」

同僚と藤麻さんの会話に、わたしはそばで苦笑いをしていた。
いいコンビって、なんですかそれ。抜け目なくイメージアップもしている藤麻さんはさすがだなと思いながら、帰り支度をする。

手伝うと言って上手くわたしを巻き込んでおいて、仕事を適当に済ましたら最低だと思ったけど、藤麻さんの書類作りは完璧だった。わたしより遅く取り掛かっても、先に終えている。

それに、資料集めでわたしに指示をするときも的確で、迷いそうなところは細かく教えてくれたし、ときどき冗談も言ってきたけど仕事はテンポよく進んであっという間に感じた。

疲れでやる気も下がっていたはずなのに、夢中になれた。

デスクの上を片付ける手を止めて藤麻さんをぼうっと見ていると、彼がこちらを向いたので目が合ってしまった。
昨日指摘されたから逸らさないようにしようと思ったはいいが、視線を動かすタイミングを失う。すると、彼がこちらに近づいてきた。
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