クールな部長とときめき社内恋愛
「明日もサポート頼むよ」

なぜ明日も藤麻さんを手伝わなければならないのか。わたしは彼専用の事務じゃない!

藤麻さんの言葉に返事をせず、わたしはデスクを離れた。

「お疲れ様でした!」

「ああ、帰るのか。ならちょっと待って、俺も出る」

無視するためにさっさと帰ろうとしたのに、彼はすぐに支度を済ませて追いかけてくる。
どうしてこんなに藤麻さんと関わらなければならないんだろう。かっこよくて人気があって、上司からの人望もあるっていう人なのに、わたしなんかを構わなくてもいいでしょう。

「どうしてわたしに絡んでくるんですか?」

会社の通路を歩いていたわたしは、後をついてくる彼を振り返った。
一瞬でときめいてしまう魅力を持っている藤麻さんに惹かれるのが怖い。たとえ手遅れでも、ダメって思っておかないといけない気がした。

瞬間的に惹かれるような恋は、もうしたくないから。

急に声を出したからか、立ち止まって少し驚いたような顔をしていた藤麻さんだったけど、すぐにふっと笑ってわたしのもとへ歩いてきた。

「友野さんのこと、放っておけないからだよ」

唇の端を上げる彼は意地悪そうに見えるのに、なぜかドキドキしてしまう。
放っておけないって、なにが? その理由は一体なに?

「監視だよ、監視。俺が社長の息子だって知っているんだから、野放しにはしておけないだろ」

なんだ、そんなことのために……。
体の力がいっきに抜けたわたしは、再び歩き出した。どうしてがっかりしているんだろう。
期待をするようなことは、なにもないのに。
< 31 / 151 >

この作品をシェア

pagetop