クールな部長とときめき社内恋愛
この人とならきっと幸せになれると思うから――。

「僕も三十三だし、そろそろ結婚を意識しはじめているんだ」

結婚しようって言われたら、まずはお母さんとお父さんに報告しないといけない。友達にも、急に言ったら驚くかな。
晃久さんの両親にも会ったりすることになるだろうし、しっかりした女性に見えるようにしないと。

頭の中で今後のことを考えて、彼の言葉を待っていた。人生で一番、うれしくて幸せだと思える瞬間を。

「だから、僕と別れてほしい」

「……え?」

一瞬、周りの音がすべて聞こえないような感覚になって、晃久さんの声が何度も頭の中に響いた。想像とは違う言葉にわたしは目をぱちぱちさせながら晃久さんを見つめる。
ちょっと待って、なにを言っているんだろう。別れてほしいって、どういうこと?

「僕とは別れて素敵な人と出会って欲しい。君はまだ若いのだから、たくさん恋愛をして……」

「ま、待ってよ!」

淡々と話を進める彼を止めて、言われたことを精一杯整理していく。信じられない、どうしてそんなことを突然言うのだろう。

「わ、わたしのこと嫌いになったの……?」

「そういうわけじゃない」

「それなら別れることないよね? 結婚を意識しはじめて、なのにわたしと別れるって……それは、わたしのとの付き合いは真剣じゃなかったっていうの……?」

声を震わせながら話すわたしは、混乱しながらも彼が言いたいことを察しはじめていた。だけど認めたくなくて、自分の想いと同じだと信じたくて必死だった。
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