クールな部長とときめき社内恋愛
オーダーしたメニューが運ばれてきたけど、食事をするような気分にはなれなかった。
久しぶりに恋人と会えると思って浮かれてここまでやってきたはずなのに、彼に告げられた別れがあまりにもショックで、信じられなくて。

「帰る……」

「そうか。悪かったね、ここまで来てもらって。ちゃんと話ができてよかったよ、ありがとう」

力なく立ち上がったわたしを見上げながら晃久さんは気遣うような表情をしていたが、引き止めるようなことはしなかった。

「元気でね。君の幸せを願うよ」

――願わなくていいよ、そんなの!
勢いよく彼に背を向けたわたしは、早足でレストランを出た。
冗談だよってわたしのことを追いかけてくるんじゃないかって後ろを気にしていたけど、それもなかった。

嘘だって思いたいのに、すべて現実。エレベーターに乗り込んで、ぼうっとしながらどうしてこうなったのか、わたしのなにがいけなかったのか考えてみるけれど、彼からの別れがあまりにもあっさりとしていたことに気づいて、それにまたショックを受けた。

彼の言葉を思い出したら喉の奥が詰まるような感じになる。目元が熱くなって、涙が流れ落ちた。
振られたんだね、わたし。

エントランスに着くと、泣いている顔を下に向けたままエレベーターから飛び出した。悲しい気持ちをどうしたらいいのかわからず、とにかく外へ出ようと思った。
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