クールな部長とときめき社内恋愛
***

どうしていつも藤麻さんは、わたしが落ち込んでいるときにそばにいてくれるんだろう。

歩道の端で抱きしめられて少しの間そのままでいたけれど、通り過ぎる人の視線がどうしても気になってきて藤麻さんから離れた。

抱きしめられたことは嫌じゃなかったから顔を赤くしていると、藤麻さんが『帰ろう』と言ったのでふたりで駅へ向かい、わたしの部屋まで帰ってきた。

なんとなくの雰囲気でわたしの部屋に来たけど、まさか『慰めてほしい』と言ったから彼はここまで来たのかな。

部屋のソファに座ったわたしは、平然とキッチンの冷蔵庫から飲み物を取り出している藤麻さんの姿を見つめる。

自分の言ったことを振り返ってみると、結構恥ずかしいことを言ってしまったなと思う。藤麻さんには何度か励ましてもらったけど、またいつものように話を聞いてくれるのかな。

優しくされると、もっと惹かれてしまうのに。そわそわしていると、藤麻さんがコップをふたつ持ってこちらにやってきた。
どうやら冷たいお茶をわたしのぶんも用意してくれたらしい。

「適当にコップ使ったよ」

「あ、ありがとうございます」

隣に腰を下ろした藤麻さんにビクッと肩を揺らしたわたしを、彼は笑った。

「何度かこの部屋に来てるけど、友野さんがここまで意識してくれるのってはじめてだよな」

「……藤麻さんはいつでも余裕ですね」

「そうでもないけど……まあいいや」
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