クールな部長とときめき社内恋愛
それを見た瞬間、また胸の鼓動が強く鳴ってしまった。
これはからかわれているんだ。そう思うのに、付箋の文字にときめいてしまう。

「この付箋使って俺の気持ち伝えようかな」

「……なに言ってるんですか」

「元カレのことなんかさっさと忘れて、俺のことだけ考えるようになればいいのに」

それって、どういうこと?
藤麻さんの指が滑るようにわたしの髪を耳へとかけて、頬をかすめた。目を細めた彼の色っぽい視線に引き寄せられて、唇が触れ合うのを受け入れる。

軽く触れた唇はすぐに離れたけど、藤麻さんの温もりをしっかりと感じた。

どうしてキスなんか……。慰めてほしいって言ったのは、甘えたいって気持ちがあったからだけどこういうときにキスなんてされたら、もう、胸の鼓動がおかしくなるくらい彼のことを考えてしまうじゃないか。

それに、俺のことだけ考えるようになればいいって、どうしてそんなことを言ったのだろう。これも慰めるための言葉なの?

藤麻さんはわたしのことをどう思っているのかな。キスに戸惑って真っ赤になっているわたしの頬を、藤麻さんは優しく撫でる。

このあとどうなっちゃうんだろう、なんてドキドキしていたけど、なんとなくお互い離れると、藤麻さんは付箋を部屋のあちこちに貼って遊びだした。

さっきまでの雰囲気はどこへ……? いや、藤麻さんとわたしにこれ以上なにかがあるわけない。
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