クールな部長とときめき社内恋愛
「藤麻さんのおかげです。付箋を見つけて笑っていたら、元気でました。……ありがとうございます」

晃久さんのことで気持ちが沈んでいたはずなのに、いつのまにか藤麻さんのことばかり考えていた。彼がいなかったら、わたしは今日も落ち込んだままだったかもしれない。

そう思っていると、藤麻さんは目を細めてわたしに迫るように片腕を壁についた。

「それじゃあ、慰めてあげたお礼に俺とデートして」

「……はい?」

なにを言っているんだ、この人は。
わたしなんかとデートをすることが、お礼になるの?

「昨日も言っただろ、本気だって。俺は友野さんとデートがしたいんだ」

彼の言葉に胸の鼓動が騒がしくなる。
昨日誘われたときうれしかったのに、返事ができなかったことを後悔していた。
今度はちゃんと自分の意思を伝えなければ。

臆病な自分は、もう終わりにしよう。頭の中で考えるだけじゃなにも進まないし、行動しないとチャンスも作れない。

「……わかりました、よろしくお願いします」

「やった。じゃあ次の土曜日、予定空けといて」

返事ができた達成感とドキドキでいっぱいのわたしに笑顔でそう告げた藤麻さんは、オフィスへと戻っていく。

次の土曜ってすぐじゃないか! 通路に残されたわたしは慌てたけど、熱くなっていた頬を両手で押さえながら、約束できたことを心の中で喜んでいた。
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