クールな部長とときめき社内恋愛
第一営業課が扱っている菓子類も好調なので、もう少し三課がどうにかならないかと会社の上層部から言われているらしい。

わたしは事務作業と営業担当のサポートがほとんどだから、与えられた仕事を淡々とやっていればいいけれど。

会社の通路を歩きながら短く息をついて化粧室へと入っていくと、同期で総務部の美知《みち》が鏡の前でファンデーションを塗り直していた。

「おはよう、舞花。はい、昨日の飲み会の反省をどうぞ」

「ううっ……ごめんね、美知がせっかくいろいろしてくれたのに」

「本当だよ。舞花の新しい恋人探しと思って、総務部の仲いいメンバーの飲み会に誘ったのに。舞花ったら酔っぱらって沢本《さわもと》くんに、『わたしと結婚したいと思う?』なんて聞くから、あの場にいた男女みんな引いてたよ」

隣の鏡に向かったわたしを、美知は呆れたような顔で見ながらそう言った。
元カレから告げられた別れの理由を思い返していたら、まずは『わたしと結婚したいと思う?』と聞くようにしようと考えたのだが、失敗してしまった。

晃久さんと別れたあと数日は食欲もなくて塞ぎこんでいたけれど、三週間経った今はもう、早く前に進まなきゃという気持ちになってきている。

わたしはあの紳士的な笑顔に安心しきっていたからダメだったの!
もうドラマのような出会いとか、運命の恋なんていう夢は見ないし信じないって決めた。今度は慎重になって、元カレのような人を選んだりなんて絶対にしない。
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