クールな部長とときめき社内恋愛
わたしの表情から察したのか、藤麻さんは口もとを緩める。

「兄さんも俺も結構普通に育ってるよ。両親は特に厳しかったわけではないし、会社も一般入社で他の社員と変わらない。でも、親が経営者というだけで周りは特別な目で見てくるときがあるし、兄と弟なら会社を継ぐのは先に生まれた兄だろうっていうのが、なんとなくあるんだよな」

一瞬、藤麻さんの表情が曇ったように感じたけど、気のせいかな。じっと見ていると、彼は頬杖をついてわたしに視線を向けた。

「友野さんは、ゲーセン好きかなって思ったんだよ。お洒落な店に連れていくのもいいけど、はしゃぐことのできる場所のほうが楽しいかなって。俺も遊ぶの好きだからさ」

そんなことを考えてくれていたんだ。
驚いたあと気恥ずかしくなって、わたしはうつむく。

背伸びをしなくて済む場所に連れて来てもらえてよかった。
ジュースが好きだし、お洒落なレストランで食事をするより、カフェやファミレスにいるのが好き。

“社長の息子”というのが同じでも、元カレと藤麻さんは違うんだなと思った。

「……楽しかったです、すごく」

好きだから相手に合わせたいと思うし、そういう想いがあるから関係も続くんだと思う。
でも、本当の自分を知ってもらわなければ、気を許せる関係にはなれない。
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