クールな部長とときめき社内恋愛
唇をぎゅっと結んだとき、藤麻さんがハンドルにもたれてこちらを見てきた。

「今日は友野さんの笑顔たくさん見たから、帰るのがもったいない気がしてエンジンかけたくないな」

「な、なに言ってるんですか」

そういうことをさらっと言うのは、ずるいと思うんですけど!
恥ずかしくて、藤麻さんから目を逸らしてしまう。

彼の言葉がうれしい。でもそれは、いつもの冗談と同じノリのような気がする。
静かな車内の中で、心臓の音が相手に聞こえてしまうんじゃないかっていうくらい、激しく鳴っていた。

藤麻さんの気持ちを確かめてみる……?
ぎゅっと拳を握って迷っていたとき、

「俺と付き合ってみない?」

平静な藤麻さんの声が車内に響いた。
わたしは顔を上げて、目をぱちぱちさせながら彼を見る。

今、なんて言った? 聞き間違えていなければ、付き合ってみない?と、言われたと思うんだけど。

「じょ、冗談ですか……?」

「俺が冗談でこういうことを言う男だと思う?」

思うから、聞いているんだ!
今まで散々、意地悪なことを言ったり、からかうようなことを言ってきたじゃないか。
期待しそうな言葉を聞かされても、すぐに冗談っぽく振る舞っていたし。

『付き合ってみない?』なんて、言い方も軽いし遊びっぽく感じるのは当然だと思う。
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