クールな部長とときめき社内恋愛
「いつのまにか本気になったんだよ」

困ったように眉を寄せた藤麻さんに、ドキッとした。

「友野さんと接しているうちに放っておけなくなって、一緒にいたいって思うようになった」

「放っておけないっていうのは、藤麻さんが社長の息子だっていうのをわたしがバラさないか監視するっていう意味ですよね……?」

「社長の息子っていうのは、俺たち兄弟がはぐらかしていてもほとんどの社員が気づいていることだ。秘密っていうほどのことでもなかったけど、友野さんを構う理由をなんでもいいから作りたくて言った。……それで、友野さんと一緒にいるうちに、好きになったんだよ」

真っ直ぐわたしを見ている目は、からかっているようには感じない。だけどまだ信じられなくて戸惑っていると、藤麻さんの右手がわたしの頬に触れた。

「どうしたら本気って伝わるんだ……」

じれったいという想いを表すような切ない声に心が捕まる。彼の表情を見て、嘘じゃないんだって思えた。

「わたしも、藤麻さんのことが好きです」

彼が本気だってわかったから、自分も想いを伝えたくなった。
前の恋を引きずって臆病になっていた心が、藤麻さんのおかげで和らいでいったから。

「最初は振り回されて戸惑っていたけど、落ち込んでいるときや苦しいときにそばにいてくれた藤麻さんに惹かれました」

わたしの気持ち、しっかり伝えたいけど改めて言葉にすると恥ずかしい。うつむいていると、藤麻さんがわたしの顎を持ち上げた。
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