不器用な僕たちの恋愛事情
前を歩く十玖のブレザーの裾を抓むと、振り返った彼が微笑む。
朝は気付かなかった十玖の右手の包帯。
十玖がナーバスになってるから、有理に頼んだ天駆。
原因は自分なのだろうと、察しがつく。
十玖が怖いわけじゃない。
自分から触れることには問題ないのだが、どうしても身体が触れられることに拒否反応を示してしまう。
自然に触れ合える晴日と萌を前にして、言葉にし難い感情が生まれた。
十玖はどう思ったのだろう。
自分を殺してでも、十玖は美空を大事にしてくれる。
キスをしたらその先を望んでしまうから――――そう言われた時、正直心が凍りついた。
悲しそうに微笑んだ十玖。
ごめんとしか言えない自分が、「嫌いにならないで」という資格なんてあるのだろうか?
十玖の為に出来ること。
果たして何が出来るのだろう。