遠い昔からの物語
伯父には娘が二人いるから、本棚には吉屋信子や村岡花子など女学生が読むような本もあったし、そういうものであれば断りを入れて堂々と読むことができたが、やはり自ら読んでみたいと思うものではなかった。
わたしが興味を引かれたのは、谷崎潤一郎だった。
今読んでいるのは「痴人の愛」だが、とてもとても嫁入り前の娘が読むものではない。
伯父に知られたら、きっと、東京にいるわたしの父に申し訳が立たないと云われるに決まっている。