遠い昔からの物語

「おれはもう呑んどるけぇ、茶はえぇぞ」

間宮中尉はそう云って猪口(ちょこ)をひょいと上げた。

わたしは慌てて、銚子を取ってその猪口に酒を注いだ。

中尉は注がれた猪口をぐっと一息で飲み干し、パッパッと猪口を二振りほどしてから、それをわたしに渡そうとした。

「……うちはお酒は呑めんけぇ」

わたしは俯いて小さな声で云った。

「ほうか。ほいじゃぁ、なんでも好きなもん喰えや」

中尉はそう云って手酌で酒を注ごうとしたので、わたしはまた慌てて、銚子を取って注いだ。

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