遠い昔からの物語

しかしその後、今度は嫁ぎ先が、亡くなった夫の弟と一緒になるよう勧めてきた。

生まれてくる子どもにとっては叔父にあたるから、きっと本当の親のように育てられるだろうということで、戦争未亡人の身の振り方としてはよくある話だ。

廣子より四つほども年若い義弟は、まだ東京の府立高等工業専門学校に入ったばかりの学生だった。

躊躇する廣子を尻目に、彼の卒業を待って祝言を挙げる運びとなった。

ところが、数々の心労が祟ってしまったのか、廣子はお腹の子を流産してしまった。

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