遠い昔からの物語

体力がほぼ回復した時、廣子は隣町の軍需工場へ働きに出る、と云い出した。

そろそろ空襲が始まりかけた頃で、標的になる場所へ自ら行くとは、正気の沙汰ではなかった。

だけど、このまま家にいるとそのうち隣組を通じて徴用で行かされるのは目に見えているから、伯父は急いで廣子の「仕事」を見つけた。

それが、家の近くの国民学校の代用教員である。

若い男の先生に次々と臨時召集令状(赤紙)が来て召集されていたので、学校は慢性的な人手不足だった。

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