遠い昔からの物語

本当は家に上げて、お茶でも出して、廣子が帰宅するまで待ってもらうのが筋だと思うが、娘一人が留守番の家に年若い男を入れるわけにはいかない。

玄関先で話している姿だって、隣組はきっと見ているに違いない。

そうは云っても。

奥の部屋に戻って、また谷崎の本を手にしたわたしは、


……あの人、わたしのこと、あまりいい印象持たなかっただろうなぁ。


と、思わずにはいられなかった。

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