遠い昔からの物語
初めて会った見合いの日、間宮中尉はわたしの顔を見るなり軍帽を取って脇に挟み、足をピシッと揃えたと思ったら、直立不動の体勢から、いきなりカクッと腰を垂直に折って頭を垂れた。
それは、頭を下げているのにもかかわらず、全く卑屈さを感じさせない、惚れ惚れするほど美しい「最敬礼」だった。
そして、海軍士官ともあろう人が、初対面の、しかも女学校を出たばかりの自分のような者に最敬礼するのは考えられないことだったので、ものすごく驚いた。