遠い昔からの物語
私が寝つけなくなったのは、東京を離れてこの地へ来てからだ。
東京にいた頃は、寝ついたと思ったら警戒警報、そして瞬く間に空襲警報が、辺り一面に鳴り響いた。
それでも、うちの方は爆撃からどうやら外れたようだと知れると、家族三人で身を固くして入っていた、家の裏の真っ暗な防空壕の中ですら、いつの間にかうつらうつらしたものだ。
空襲などほとんどないこの町に来て、毎晩こんなに眠れなくなるなんて不思議でならない。