遠い昔からの物語

お茶を出したまではよかったが、この先どうしよう。

大体、同じ年頃の男の人と話す機会なんて、尋常小学校を卒業して女学校に入学して以来、皆無だった。

彼の方も緊張しているようだった。きっちりと膝をそろえて正座をしていた。

勉強はできるのであろうが、神経質そうな顔立ちからは、少し冷ややかな印象を受けた。

それにしても、座卓を挟んで向かい同士に座っている姿は、まるでお見合いではないか。

開け放した縁側の軒先に掛けられた風鈴が、折からの風に吹かれて、ちりん、と鳴った。

その音がやけに大きく響いた。

「……どうぞ、足をお崩しになって」

わたしはおずおずと勧めた。

すると、彼は少しホッとしたように「では、失礼して……」と口の中でもごもごと云いながら、膝を緩め胡坐(あぐら)をかいた。

そして、また沈黙になった。

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