遠い昔からの物語

「……いや、最近の慰問袋は、なかなか工夫がなされているよ」

彼は突然、今までの表情を一変させ、悪戯(いたずら)っ子の腕白坊主のような顔をした。

それから、きょとんとしたわたしの目をじっと見て、

「これを受け取った兵隊は、きっと感激し、発奮して、金鵄(きんし)勲章をもらえる働きをするに違いない」

と、さも愉快そうに云った。

彼のもう片方の手には「痴人の愛」があった。

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