遠い昔からの物語
「まぁ、まぁ、寬仁さん、よう来ちゃった。ご出征、おめでとうございます。立派な兵隊さんになって、お国のためにご奉公してくんさいね」
伯母が彼を見て云った。
彼は崩していた足を正座に戻し、
「ありがとうございます。お国のために微力ながら力を尽くす覚悟です」
頭を深々と下げた。いつの間にか、神経質な面持ちが戻っていた。
「小父さんやお義姉さんは、息災でおってですか」
初めて聞く、彼のこの地の言葉だった。
急に遠い人になったような気がした。
そして、伯母と世間話を始めた。