遠い昔からの物語

夕飯を食べていくように伯母は勧めたが、彼は伯父や廣子が帰ってくる前に辞去した。

「お母さんは、千人針を準備されとるんじゃろ。うちは女が三人もおるし、隣組にも声かけるけぇ、遠慮のう持って来んさいね」

帰り際に伯母がそう云うと、

「ありがとうございます。母が助かりますけぇ、今度持ってきます。小父(おじ)さんやお義姉(ねえ)さんにはお目にかかれんでご無沙汰しとるんで、よろしゅうお伝えつかぁさい……それでは」

彼は会釈をして帰って行った。

わたしは、もう二度と来て欲しくない、と思った。

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