遠い昔からの物語

「僕は、きみにずいぶんと嫌われたみたいだね」

彼は、口の端を歪めて苦笑した。

その顔を見て、わたしはお国のために出征する人に対して、薄情な態度をとってしまったことに気づき、ハッとした。

彼が手を伸ばして、脇に置いてあった千人針を取った。

そして、わたしにそれを差し出した。

「僕は、きみに、刺してもらいたい」

わたしは無言で、彼の手から千人針を受け取った。

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