遠い昔からの物語

◇第七話◇


彼は、それから三日とあけず訪ねてくるようになった。

それも、いつも昼下がりの、家にはわたししかいない時間帯だった。

「好きな本が自由に選べるから」というのが彼の理由であったが、嫁入り前のわたしは、世間に変な噂が立つのを恐れた。

それを伯母に云うと、隣組には「もうすぐ出征する親戚の子が、気晴らしのための本を借りにやってくる」というようなことを世間話の中に紛らせてくれた。

みんな、これからお国のために兵隊になる人に対しては、寛大にならざるを得なかった。

それに、入隊するまでの限られた期間のことだ。

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