遠い昔からの物語

彼は本棚の前で高い背を屈め、持って帰っていた本を元の場所へ戻した。

それがプラトンの「饗宴(きょうえん)」というものだったので、

「いつも難しそうな本ばかりね」

わたしは思わず云った。

その前は、ソクラテスだのアリストテレスだのが関連した本だった。

「古代の哲学書だと、だれに見られても咎められないからね。それに、自然科学の祖だしね。
……でも、云うほど難しい内容ではないよ」

理科系を勉強している彼は平然と云った。

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