遠い昔からの物語
「プラトンの『饗宴』には、人間は太古の昔、男男・女女・男女の三種類だったらしいが、その後人間が驕り高ぶったために、神の逆鱗に触れて半分に引き裂かれてしまい、それ以後人間は、失った自分の半身を捜し求めて彷徨うようになった、っていうようなことも書いてある」
「案外、俗なことが書いてあるのね。哲学って、もっと高尚なものだと思っていたわ」
わたしは驚いて云った。
「もちろん、これは一つの挿話に過ぎないけれども、人間とはなにかということを見つめるのが哲学だからね。俗な部分も多いよ。
いや、ある意味……俗そのもの、かもしれないね」