遠い昔からの物語
それに、誘う相手を間違えている。
泉邸とやらへは、本当はわたしではなく、廣子と行きたいはずなのに。
それにしても、入隊までの限られた日々を、どうしてこの人は、わたしなんかと過ごしているのだろう。
第一、東京から帰省して以来、まだ一度も廣子と会えていないではないか。
確かに勉強ができて賢いのかもしれないが、肝心なところでは、さてどうだろう。
廣子との縁談が駄目になったわけが、なんだかわかるような気がした。