遠い昔からの物語
わたしは彼に引っ張られるようにして、勝手口から裏庭に出た。
彼は防空壕の入り口を開け、わたしを先に入れようとした。
突然、わたしは彼に掴まれていた手を、振りほどいた。
そして、家の方へ駆け出した。
「わりゃぁっ、なに考えとるんじゃっ、死にたいんかっ」
すぐさま追いかけてきた彼が、わたしの肩を掴んだ。
その直後、わたしは、一瞬、目の前が真っ暗になって、地面に崩れ落ちた。
身体は小刻みに震え出し、額には脂汗が滲んできた。
胸の動悸が激しくなり、息苦しくて堪らず、いつの間にか、口で荒い呼吸をしていた。
……「あれ」がやって来たのだ。