遠い昔からの物語

わたしの異変にやっと気づいた彼は、

「……どうしたんだ、大丈夫か」

心配げにわたしの顔を覗き込んだ。

わたしはなにも答えられず、交差させた腕で自分自身を抱きしめ、ただただ、がたがた震えていた。

「もしかして……きみ、防空壕へ入れないのか」

彼の問いに、わたしは大きく肯いた。

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