遠い昔からの物語
彼がわたしを抱えるようにして、勝手口から家の中へ戻った。
「……あなた……も……死んでしまうわ……防空壕に……行って……」
わたしは震える声で、彼に云った。
「……きみを残して、一人で行けるわけないだろうっ」
けたたましく鳴り響くサイレンの中、彼は吐き捨てるように怒鳴った。
そして、勝手口の傍の土間の上でしゃがみこんでいるわたしを、大きな身体で上から包み込むように覆った。
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