遠い昔からの物語
薫子さんは風呂の中でもいろいろ教えてくれた。
今月、とうとうアメリカが日本に石油を売らなくなったらしい。
そうなれば、これからますますいろんな物資が不足していくに違いない。
「稔さん、なぁんにも云わないけど、かなり過酷な訓練させられてるみたいでね」
湯船に浸かりながら、彼女は一点を見つめて云った。
「ここの基地に移って訓練を始めてから、どんどん、どんどん、痩せていってるの」
彼女は目を瞑った。
「前はわたしから、今度の休暇はいつなのって手紙で聞かないと教えてくれなかったのに、今回は自分から電報打って来たのよ……あなたの間宮中尉も似たようなものでしょ」
わたしは大きく肯いた。