遠い昔からの物語
留守番のわたしは、彼から勧められた「浅草紅団」の続編である「浅草祭」を読んでいたが、そのうち夕闇が訪れて、読みづらくなった。
本を放り出したわたしは、灯火管制のために電灯を点けても薄暗い部屋の中で、夕飯も食べずに、ただぼんやりしていた。
お腹は四六時中空いているのに、今はなにも、口に入れる気にはなれなかった。
……やっぱり、つまらない意地なんか張らないで、あの人のうちへ行けばよかったかもしれない。