遠い昔からの物語
祈るような気持ちで、警報解除を待ったが、とうとう空襲警報に切り替わった。
わたしは電灯を消し、暗闇の中、防空頭巾を取りに行って被った。
……たった一人で、防空壕に入れるだろうか。
夜にやってくる空襲が惨事を巻き起こしやすいということは、経験上厭ってほど知っている。
防空壕へは絶対に入らねばならない。
不安が波のように心に押し寄せてくる。
心臓が、バクバクと音を立てているのが聞こえてきた。
わたしはそんな気持ちをなんとか宥めながら、とにかく勝手口のある台所へ向かった。