遠い昔からの物語
「のぼせる前に背中流してあげる」
薫子はザバッと湯船から立ち上がり、洗い場へ向かった。
長い首、華奢な肩、背中から腰にかけての優美な線、引き締まってきゅっと上がったお尻、すんなりと伸びた足。
彼女の裸身の後ろ姿は、匂い立つように美しかった。
「こんなのだったら、わたしに休暇のことは云わないで、仲間と一緒に芸者を上げて遊びまくってたときの方がマシだったかなぁー」
わたしの背中を手ぬぐいで擦りながら、彼女は声を張り上げた。
「……げ、芸者って」
わたしがぎょっとして振り向くと、
「あぁ、心配しなくても、間宮中尉はもう大丈夫よ。海軍の中でも堅物になったって有名だから」
彼女は声をあげて笑った。