遠い昔からの物語
「きみが、ちっとも奴の話をしないからさ。
これはしちゃいけないんだなって思ったんだが、
……やっぱりそうだったな」
彼はわたしの背を撫でながら云った。
「僕のうちにも、何度も遊びに来て泊まっていったからさ。うちの両親に佐伯の妹に会ったって云ったら、きみに会いたがってね」
そうだったんだ。
兄がお世話になっていたというのに、不義理をしてしまった。
「……ご両親に……よろしく…云って……おいて…ね」
わたしは泣きじゃくりながら云った。