遠い昔からの物語

「……僕では、不満かい」

急に黙り込んでしまったわたしを、彼が少し不安げに見た。

「廣ちゃんのことは、もういいの」

わたしは上目遣いで尋ねた。

「確かに、廣子さんは、僕の初恋の人だけどね」

彼は苦笑した。

「だけど、きみと出逢った今の僕は、きみと共に歩んでいきたいと思っている」

彼はきっぱり答えた。


「……そして、僕が出征している間に、
きみをだれにも渡したくはない」

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