遠い昔からの物語
◇第十四話◇
「……くそっ」
突然、彼が舌打ちをした。
「……先刻まで、あがぁに元気じゃったっちゅうんに」
彼は悔しそうに呟いた。
「どうしたの」
わたしは、自分に覆いかぶさる彼の顔を見上げた。
「何処に挿れたらいいのかわからなくて、ちょっと焦ったら、急に萎えてしまった……まいったな……」
彼は途方に暮れていた。
どうやら、彼も、このようなことをするのは初めてらしい。
わたしは、思わずふっくらと微笑んだ。
「せっかく、安藝子を妻にできるっていうときに……おれは一体、なにやってんだ……」
彼は全身の力が一気に抜けたみたいだった。
そんな彼を、わたしはやさしく抱きしめた。
「わたしは、もう……寬仁さんの妻よ」
彼……寬仁の耳元でそっと囁いた。