遠い昔からの物語

「……義彦兄貴が生きていたら、いろいろ教えてもらえてたかもしれないのになぁ」

隣で身を横たわらせた寬仁は、わたしに腕枕をしながら云った。

「彦兄、玄人相手にかなり浮名を流していたからね」

「えっ、そうなの」

わたしはびっくりして寬仁を見た。

海軍士官の軍服に身を包んだ、写真の中の廣子の夫は、清廉そうな印象だったのに。

「結婚する前のことだけど、廣子さんには内緒だぜ」

寬仁は悪戯(いたずら)っ子の顔をした。

「おふくろなんか、このまま放っといたら何処(どこ)の芸者を嫁に連れてくるかしれやしないからって云って、早く見合いして身を固めさせようと、躍起になってさ」

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