遠い昔からの物語

彼と入れ違いに、今度はわたしが部屋の中へ入る。

御膳は既に片付けられていて、蚊帳(かや)が吊ってあった。

その中の、並んで敷かれた二組の蒲団が、うちの目に飛び込んできた。

そのとたん、わたしの湯で火照(ほて)った顔が一気に青ざめた。

窓際に置かれた椅子に腰掛けて、煙草を吹かしていた間宮中尉が平然と云った。

「手紙にはああ書かんと、親父さん、おまえをここに寄こしてくれんじゃろう」

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