遠い昔からの物語
◇第四話◇
……うちは、これから、どがぁなことをされるんじゃ。
わたしの目に涙が込み上げてきた。
間宮中尉が左右の手のひらで、わたしの頬をすっぽり包んだ。大きな手だった。
「……おれが、怖ぇか」
中尉は暗闇の中で、わたしの目を見て云った。
「見合いの日も、結納の日も、
そして、今日も……おまえはまともに口もきいてくれんけん」
わたしの目の涙が、あふれそうなほどふくれ上がる。
「おれと夫婦になるんが、そがぁにいらんのんか」
わたしを気遣う、やさしい声だった。
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*いびせえ=怖い・恐ろしい