遠い昔からの物語

中尉の顔が近づいてくる。

中尉の唇がわたしの唇を覆う。

わたしは自然と、彼の背中へ、腕を回した。

中尉の舌が、うちの口の中に入ってきた。

「接吻」というものは知っていたが、それはただ唇と唇とを合わせるだけだと思っていた。

まさか、そんなことまでするとは思わなかったので、わたしはびくっとした。

だけど、彼は躊躇(ためら)うことなく、わたしの舌に自分の舌を重ね合わせてきた。

わたしは回した腕に力を込めた。

< 31 / 230 >

この作品をシェア

pagetop