遠い昔からの物語
◇最終話◇
瞬く間に時間が過ぎて、三日間の義彦さんの休暇の最後の日の朝になった。
汽車で家に帰るわたしと薫子さんを、中尉たち二人が駅まで送ってくれるそうだ。
わたしは自分の身支度を手早く済ませ、義彦さんが軍服を着る支度にかかった。
町へ出るのに着流しというわけにはいかない。
正座したわたしは、投げ出された義彦さんの足を膝の上に乗せ、軍足を履かせた。
それから、衣紋掛けの白いシャツを取るために立ち上がろうとしたら、義彦さんはわたしの肩をぐいっと引き寄せた。
抱きしめて、くちびるを重ねようとする。
「……急がんと、薫子さんたちが迎えに来るけぇ」
いくらわたしが渋っても、一度決めたことを必ずやり遂げるこの人が退くわけがない。
わたしたちは熱いくちづけを交わした。
互いの舌と舌が口の中でねっとりと絡み合う、濃厚なくちづけだった。