遠い昔からの物語

その後、第二種軍装という白い軍服を着用し、髪をオールバックに撫でつけた義彦さんの姿は、やはりどこから見ても「海軍士官」で、急に遠い人になったように思えた。

そして、もうすぐ離れ離れのときが来るのだということを思い知らされる。

この人はわたしのものである前に、お国のものなのだ。

それは誇らしいことであるはずなのに、わたしの心にはどうしようもなく苦い、やるせない思いが広がる。

わたしは俯いてしまった。

夕べ、このときが来るのが(つら)くて、義彦さんの胸の中であんなに泣いたのに、やっぱり涙が込み上げてくる。

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