遠い昔からの物語

ところが、義彦さんは急に表情を引き締め、

「……おまえはもう軍人の妻ゆえ、人前では絶対に涙を見せてはいかん」

と、きっぱり云い放った。

「たとえ、おれがお国のために命を捧げたときもだ」

それは、わたしが初めて聞く、軍人としての間宮 義彦中尉の声だった。


「……覚悟はできておるな」

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