遠い昔からの物語
「……で、間宮、貴様はどう思うんや」
今度は、神谷がおれのコップに麦酒を注ぎながら訊ねた。
「なにがだ」
おれはそう訊き返してから、コップの中の麦酒をごくっと呑んだ。
「おまえは、日本がアメリカと戦うことになると思うか」
神谷は上目遣いで訊ねた。
湯上りの空きっ腹に入れた酒でもう酔うたか、と思ったが、奴の目は真剣な色を帯びていた。
「……さぁ、どうだろうか。どちらにせよ、おれたちは命令が下りればそれに従うしかないからな」
おれはそう云って、また麦酒を口に含んだ。
「もし、戦になったとしたら、
勝てると思うか……アメリカに」
神谷は目に力を込めて訊いてきた。
おれたちは、海軍兵学校の遠洋航海の演習でアメリカへも行って、見てきている。
あの広大な国に戦を挑むのか……いや、挑めるのか?
それでも、
「勝てるさ」
おれは即答した。
「ただし……」
と、おれが言葉を次ぐと、神谷は自然と身を乗り出してきた。
「『鵯越え』並みの奇抜な攻撃で敵の目をくらませているうちに、さっさと講和に持ち込まねばならん。長引けば、油を持ってる奴らには敵わん」
おれはきっぱりそう云い切ると、コップの中の残りの麦酒をぐっと呑み干した。