遠い昔からの物語
◇第二話◇
「あぁーっ、もおっ、ご自分たちだけで食べていらしてっ」
廣子と一緒に部屋に入ってきた、神谷の婚約者の薫子が叫んだ。
二人とも白いブラウスにスカート姿だった。
「まだ飯には手ぇつけとらへんわ。大体、おまえらが長風呂過ぎるからや」
神谷が不平を云った。
「長風呂って……わたくしたち、お風呂場であなたがたの汚れ物のお洗濯をしてましてよ。よくそんなことおっしゃるわ」
薫子はぷんぷん怒り出した。
廣子は、おれがその辺に適当に置いた風呂の道具を見つけて拾い上げ、洗濯物の籠と自分の風呂道具と一緒に、部屋の隅に寄せていた。
それを終えると、廣子はおれの隣に腰を下ろしながら、薫子に向かって、
「そんな顔をしていると、せっかくのお料理がまずくなりますよ。早く、お座りなさいな」
と微笑みながら促した。
薫子も渋々それに従って、神谷の隣に腰を下ろした。
「さすが、貴様が選んだ女だけあるわぁ。人間ができとう……だれかとは大違いや」
神谷がおれを見て、しみじみ云った。
「だれがですってえっ」
薫子の目がまた釣り上がった。