遠い昔からの物語
ほとんど神谷とその婚約者の痴話喧嘩で終始したような朝餉だったが、廣子は楽しそうにしていた。
仲居が御膳を片付けたあと、廣子は風呂場で洗濯した物を入れた籠を抱えて、
「義彦さん、もう物干し竿、掛けてくれとるん」
と尋ねた。
洗濯物を干すための竹竿は、仲居に云ってもう既に窓の外に掛けてあった。
窓際に置かれた椅子に座って、紫煙を燻らせていたおれは肯いた。
廣子はにっこり笑って、早速、窓の外の物干し竿に洗濯物を掛け始めた。
外は雲ひとつない、晴れ渡った青空だった。
今日も暑くなりそうだ。