遠い昔からの物語

いつの間にか、廣子が歌を口ずさんでいる。

「……えらぁ上手じゃのう」

おれは感心して思わず云った。

高く澄んだ、きれいな歌声だった。

廣子はパッとおれの方を向き、

「女学校の卒業式では代表で独唱したんよ。歌だけはうち、お姉ちゃんに負けんのん」

と、誇らしげに云った。

< 62 / 230 >

この作品をシェア

pagetop