遠い昔からの物語

おれは早速、写真の廣子を指差して、この娘と見合いがしたいと母に云った。

すると、母の顔が見る見るうちに曇った。

見合いの話が来ているのは姉の方だと云う。

写真に妹が写っているのは、急な話で一人きりの写真がなかったためだそうだ。

姉を差し置いて妹と見合いするのは常識はずれだと、両親と仲人から散々云われ揉めに揉めたが、おれはどうしても譲らなかった。

そうこうしているうちに、しばらくたって、姉に縁談が決まったという、おれにとっての「吉報」が届いた。

これで晴れて廣子と見合いができると思っていたら、今度は廣子の親が「下の娘はまだ子どもなので」と断ってきたと仲人が云う。

母は「姉妹して海軍中尉をなんじゃと思うとるんじゃ」とぷりぷり怒っていたが、おれは意に返さず「こちら側も大尉になるまでは正式に届けを出せないので待つことに問題はない」と仲人に云ってもらった。

こうして、ようやく見合いに漕ぎつけ、廣子と「再会」したのだった。

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